寿司の達人
うちの親父はかなりボケが進み 脳味噌プリン状態
息子である俺の顔もわからんようだが台所に立たせると、スイッチが入ったかのように豹変し、マシーンのように一切無駄な動きをせずに、酢飯の仕込みから魚の捌きまでを黙々とこなし、現役時代となんら変わることのない熟練の手つきで寿司を握る
その時、親父には家族は客にしか見えてないようで普段のフガフガした口調とはガラリと変わり、威勢のいい声で
「へいらっしゃい なに握りやしょうか?」
おかげで我が家は月に一度、達人の本格江戸前寿司を味わえるのであった
初めはボケの進行を抑えるためのリハビリの一環のつもりだったが、さすがは13歳から寿司を握り続ける父。
ボケてもなお衰えぬその手さばきには感嘆を漏らすしかなかった
「ホントにあんたは寿司バカなんだねぇ」
とは、いつも涙をぬぐいながら寿司を食べる俺の母の談である
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