心に残る思い出、何もなし
小中学校の卒業文集にさえ
「心に残る思い出、何もなし」と書いた私。
人並みの生活を送ることさえ出来ず、夢と希望は常に打ち砕かれ、
ただ目の前の出来事を受け入れることに専念した。
世の中に失望していたわけでもなく、
すべてに無気力だったわけでもなかったが、
気がつけば、ひどく冷めた少女時代を送っていた。
そんな私にも、ひとつだけ楽しかった思い出がある。
もう断片的にしか思い出せないけど・・・
ものごころついたころから、父はすでにいなかった。
4歳くらいのある夏の日、
家の前で遊んでいた私の前に父が現れた。
大喜びで家の中に飛び込んで、
夕食のカレーを作っていた母に向かって叫んだ。
「おとうさんが帰ってきたよーーー!!」
部屋の中でいっぱい遊んでもらった。
足で身体を宙に持ち上げてもらったり、
「たかいたかい」をしてもらったりした。
ずっと笑ってたせいでヨダレが父の顔に垂れた。
それを見てみんな大笑いした。私も大笑いした。
家族6人でカレーを食べた。母以外のみんな笑ってた。
嬉しくて楽しくて幸せ一杯だったあの日。
無邪気だったあの頃。何故か胸が痛くなる。
関連記事
-
おじいちゃん
おじいちゃん。もうお別れして
から7年たったね。わたしはおじいちゃんが
苦手だった。おじいちゃんからの愛を
受け止めてなかったから。たくさん与えててくれたのに。
わたしが賞をとった…
-
大切な妹
大学生の妹の様子がおかしな時期があった。
精神的な病気の一種らしく、家族中で一時期どう扱っていいか分からず混乱していた。
ある時、いきなり家をパジャマ姿で外に出て行き、妹はごみの収集場所まで…
-
ばあちゃん大好き。
ばあちゃんごめんね
何もしてあげられなかった…
私は小さい頃から色々して貰ってたのにね…
最後にもう1度話したかった。
もう1度笑い合いたかった。
もう戻らない事くらいわかってるのに
1番…
-
12歳違いの父と6歳違いの姉
高校の時、母親が病気で亡くなった。
父は弱い人だったのだと思う。
苦しむ母親から目をそらして、他に恋人を作って、母親が亡くなると家を出ていった。
「高校卒業までは面倒をみる。その後は自力で暮らし…
-
親が子供を
母の葬式の時、祖母(母の実母)は
「親が子供を送ってはいけないんだよ」
と言って、斎場から火葬場への車に決して乗ろうとしなかった。俺は子供ながらにも疑問に感じ、
「何で?何で?」
と泣きながら何度…
-
手をつないで
うちのハハオヤが言ってた話。
私は、年子の女2人姉妹の妹なんだけど、姉は生まれたときからすごく
手のかからないおとなしい子だったらしい。姉が一歳三ヶ月で私が生ま
れてからも、それは変らず、母はそれに…
-
兄が交通事故で亡くなりました
スレ違いな話になってしまいますが、報告させて下さい。
前スレで、父が家を出た後、優秀だった兄が中学卒業後、
鳶職として家計を支えてくれた話を書いた者です。
その兄が、先週、火曜日に交通事故で亡く…
-
最高の一杯
おじいちゃんとの思い出。
おじいちゃんは7年前に遠くに行ってしまったけど、俺の中で忘れられない思い出があります。元々、母が長女でおじいちゃんとおばあちゃんとは、ずっと一緒に暮らしていました。よく夜…
-
君がいるから
御歳84になるおじいちゃんが言いました。
「僕はね、昔、まあ今もだけど。運動も勉学もロクにできなかった」
「友達もいないし。顔も悪い。いつもひとりぼっち」
「だから、死のうと思ったことがある」
…
-
置き手紙
朝、出かけにお兄ちゃんに、置き手紙ををした。
「お兄ちゃん、お鍋にお豆がひたしてあります。
それを煮て、今晩のおかずにしなさい。お豆がやわらかくなったら、
おしょう油を少し入れなさい。」その日も一…
- NEXT
- おばあちゃんへ