人身事故
去年の実体験の話をします
6月の半ば頃の話。
当時俺はバイク買ったばかりで、大学が終るとしょっちゅう一人でバイクに乗ってあちこちを走り回っていた。
その日も特にする事がなかったので、次の日休みという事もあり神奈川方面へ結構な遠出をした。
で、その帰り道、たしか夜の12時過ぎくらいだったと思う。
道とかも適当で標識を頼りに、あまり車通りの多くない道を世田谷方面に向かって進んでいると、急に前を走っていた車が急ブレーキを踏んで蛇行しガードレールにぶつかった。
目の前で事故を見たのは初めてだったのでかなりびっくりしたが、そうも言ってられないので、ひとまずバイク路肩に停めて車のほうへ駆け寄った。
車の窓から中を覗き込むと、中には女の人がいて両手でハンドルを持ったまま頭を項垂れてガタガタ震えている。
「え?これヤバくね?」と思い、とりあえず窓越しに「大丈夫ですかー?」と声をかけたのだが、女の人から返事は無い。
結構パニック気味だった俺は、ここで警察に電話しないととふと気付いて110番をした。
警察を待っている間、俺が何度か「大丈夫ですかー?」と聞いていると、女の人はやっと車から降りてきた。
見た感じ怪我は無さそうだが、顔色は真っ青で何かぶつぶつと呟いている。
少し呟きが気になったので、「どうしたんですか?」と口元に耳を近付けると、震えた声でとんでもない事を呟いていた
「子供轢いちゃった…子供轢いちゃった…子供轢いちゃった…子供轢いちゃった…」
俺はかなりギョっとした。
事故の瞬間を見てはいたが、子供なんていたか?
記憶を思い返しても道路に人影があったようには見えなかった。
慌てて道路の方を振り返ったが、どこにも子供の姿はない。
俺は女の人を路肩に座らせて、あちこち歩いて見て周ったのだが、子供なんてどこにもいない。
そうこうしているうちにパトカーがやってきて、警官が2人降りてきた。
警官に俺が事情を話し、警官もかなりあちこち探してみたのだが結局子供はいなかった。
俺も色々事情を聞かれたのだが、少なくとも俺は女の人の乗る車が急ブレーキを踏んでガードレールにぶつかったところしか見ていないし、道路に人影も見ていない、
俺は自分の記憶にあるとおり警官に伝えた。
再度警官が女の人に事情を聴きに行き、俺もいっしょに聞いていたのだが、女の人が言うには急に道路わきから子供が飛び出してきて、衝突する音も聞いたという。
でも現実にはどこにも子供の人影は無い。
警官の一人がパトカーに戻り無線で何か話し始め、もう一人の警官が女の人に怪我はないかとか痛い所はないかとか聞いていたとき、急に女の人が道路わきにあったカーブミラーを見て
ぎゃあああああああああああああああ
と物凄い絶叫を挙げた。
びっくりして俺と色々聞いていた警官もカーブミラーを見た、カーブミラーには俺が一番手前に、歩道の路肩に女の人が座り、その横に警官が屈んでいたのだが、女の人と警官の後ろ、本来誰もいないその場所に子供が写っている…。
年は4歳か5歳くらい、ちょっと良いところの幼稚園児が着る様な服を着て、無表情に鏡越しに俺たちを見ていた。
俺と警官はたぶんほぼ一緒に後ろを振り向いたと思う。
しかし、そこには誰もいなかった。
もう一度ミラーのほうを見ると、そこには俺たち3人しか写っていなかった。
女の人はこれで完全にパニックになって、とても話が聞けるような状態ではなくなってしまい、警官が呼んだ救急車でそのまま運ばれていった。
そして、俺には一応あとでまた事情を聞くかもしれないと住所や電話番号を聞き、最後に
「ああいうのはさっさと忘れたほうが良い、気にしないほうが良いよ」
と言ってきた。
が、そう言っている警官もかなり顔色が悪かったが…。
その後、警察からは特に連絡など何もなかったので、申し訳ないが後日談とか真相とかいわくとか、そういうのは全く解りません…
以上で俺が体験した話は終わりです。
関連記事
-
展望台に登る道
10年程前の話
夜中に彼女と峠道をドライブ。
で、大きめの駐車場があったから立ち寄ったのね。
駐車場には他に車が一台停まってたけど、人は乗っていないみたいだった。
「?」と思って辺りを見渡すと、どう…
-
さっちゃん
一年前、私達と友人家族は、とある湖の近くでキャンプをしました。
昼の1時にチェックインし、テントの設営などを終え、
夕食までの時間に大人は休憩タイム、子供達は周辺で遊んでいました。そろそろ夕食をと…
-
すこし開けた場所
地元が山に囲まれたところなので、子供の頃探検したりして遊んでいた。
ある日、友人数人と山の奥まで探検してみようと、林道はずれて奥へ奥へ進んだ。
迷わないように、学校からかっぱらったでかいスズランテー…
-
3歳くらいの女の子と遊ぶ光景
怖いというか切ない話になってしまうが。
夢つながりで、俺も結婚してから時々夢の中に、3歳くらいの女の子と遊ぶ光景が何度も出てきたんだよ。
笑顔がはっきりと覚えているくらい。
それからカミさんが妊娠し…
-
赤いまり・婆ちゃんの家の風呂
爺ちゃんがまだ今よりは幾分か若い頃、山の中の畑に野良仕事に出かけた時の話だそうだ。
山の中と言っても、そうそう山奥でもなく、傾斜もゆるい山道を歩いて二十分ほどの場所にある、周りを竹林に囲まれたような…
-
骸骨少年
23区内に住む友人の弟さんの経験談。自分は友人から聞いた。
その地区の弟さんと同年代の男子は、小学生時代のある一時期、骸骨の男の子とよく公園で遊んでいたらしい。
『骸骨』は痩せ細った様の比喩でなく…
-
子供の霊
ある家族がいた。
家族構成は父、母、息子、祖母です。
その男の子、とても病弱で、よく怪我をする子だったそうです。
その子は、障害か何かを抱えていると思った家族は、病院に行ったそうです。
ですがその子は…
-
カメラに映る人影を消す
知り合いの話。
土方系ITに努める彼の事務所にある日、某所より依頼があった。
「なんか極秘の依頼だとかで・・・・」
正式な発注者名も告げられず、営業も通さず社長自身が窓口をやっていた。
納入明けに社…
-
お下がり
俺のうちは昔超貧乏で、欲しいものなんか何一つ買ってもらえなかった。
着てる服は近所の子供のお下がりだったし、おやつは氷砂糖だけだった。
そんな俺でも、義務教育だけはちゃんと受けさせてもらっていた。…
-
寺の巨木
俺が小2で8才のころの体験。
俺はその当時、週末や祝日になれば、兄貴と一緒によく祖母の家に泊まりに行ってた。
田舎だがかなり広い家で、なんでも亡くなった祖父は、代々近隣の土地を持ったお金持ちだった…