骸骨少年
23区内に住む友人の弟さんの経験談。自分は友人から聞いた。
その地区の弟さんと同年代の男子は、小学生時代のある一時期、骸骨の男の子とよく公園で遊んでいたらしい。
『骸骨』は痩せ細った様の比喩でなく、そのまま骨格標本の如き骸骨という意味。ちなみに服は着ていたとのこと。
この手のものって、創作にしても夕方以降に出るのがセオリーだと思うんだが、普通に昼間遊んでたそうな。
放課後だから夕方に近いと云えば近いけど、少なくとも誰そ彼時ではない。
で、その骸骨くん。
外見以外はごく普通の男の子で、公園で遊んでいる間は、子供達も特に恐怖を感じたりはしなかったという。
初対面時はぎょっとしたが、何かこう、そういうものとして受け入れたそうだ。
そんな訳で、骸骨くん出現後も、子供達は公園に通い続けた。
が、何度目だかに、日が暮れ始めたから帰ろうという時になって、骸骨くんがもっと遊びたいと言い出し、
「親が心配する」と断って帰ろうとする弟さんについて来てしまった。
そこで初めて弟さんは少し怖くなったらしい。
なんとなく家に入れたら不味いんじゃないかと感じたそうだ。
結局骸骨くんはマンションまでついて来たが、急に家に上げることは出来ないと説明し、弟さんはマンションの中に駆け込んだ。
入り口がオートロックタイプではなかったため、部屋まで着いて来るのでは…と心配したが、幸い杞憂に終わった。
ただ、自室に入る前に、廊下からこそっと下を覗き込んでみたところ、まだ入り口でうろうろしていたとの事。
そのマンションは入り口に、防犯用の赤外線センサー?が取り付けられているそうで、
「どうもその付近から先には進めないようだった」という話。
つまり骸骨くんは、弟さんの迷惑を考えて入るのを遠慮した訳ではなく、 センサーに阻まれ“入りたいけど入れない”状態だったらしい。
夕暮れ時ってのもあいまって、流石にその様子を不気味に感じた弟さんは、その日初めて家族に骸骨少年の話をした。
友人一家は空想か何かだと思い、その時は弟さんに適当に話を合わせたが、 いくらもしないうちに、ご近所で同種の話を耳にするようになって驚いた。
弟さん以外にも、骸骨少年について来られた子がいた訳だ。
ここに来てようやく怖くなってきた子供達が親に打ち明け、 その話を子供の想像力の産物と捉えた親が、笑い話として他の親に話したり、 子供の怯えぶりを心配してご近所の父兄に相談したりして、結果、
「何だかよく判らないが、うちの子だけの空想話では済まないようだ」という話になった。
勿論、大人達は子供の話をそのまま信じた訳ではないが、 とにかく子供達が怖がっているのは事実なので、パトロールをしてみたり、
『こういう噂があります、不審者に注意。公園で子供を遊ばせないように』というようなチラシも、回覧板で廻された。
地元の学校でも、公園で遊ばないよう児童へ注意があったという。
ちなみに、目撃者・遭遇者は小学生以下にほぼ限られ、当時中学生だった友人も、
「自分自身では見ていないし、 大人達の中にも見た人は居なかったと思う」とのこと。
友人の知る限りという限定付きだけど、骸骨少年について来られた子は、ほぼ全員マンション住まいか、閂つきの門扉がついてるお宅の子で、 玄関先まで来られてしまったパターンは、幸いにして無いという話だった。
そういう家に住んでない子の例も少数あったらしいが、知り合いの住むマンションに駆け込んで事無きを得たとか。
従って、センサー・閂無しの場合や、家に上げるとどうなるかは不明。
赤外線センサーがあると何故駄目なのかも不明だし、 そもそも、本当に赤外線センサーが駄目だったのかどうかも実際は不明。
また、骸骨少年は単に遊びたいだけのようで、家に上げなかったことで、その後恨まれた・危害を加えられた・霊障があったといった話は皆無。
正体も、公園との因果関係も、その後出没しなくなった理由も不明。
結局、いつの間にか目撃談はなくなって、自然と事態は収束したそうな。
一応当時の大人達の感触としては、子供達の狂言とは思えなかったとの事だけど、
一種の集団ヒステリーだったのかなあ、という気もする。(それか全部友人の創作かw)
ただ何か、夕暮れのマンションの前でうろうろする骸骨少年とか、
当たり前みたいに骸骨と遊んでて、後からじわじわ恐怖を味わっただろう子供達の心境とか考えると、
ほんのり怖かったので投下させてもらった。
「不明部分は不明のまま、
こういう騒ぎが昔あったのだけは確かだけど、見てないから骸骨話が本当かどうかは判らない…」
てスタンスで話してくれたので、何か余計に怖かった。
友人曰く、「地元民なら回覧廻ったくらいだから覚えているはず」との事。
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