エアブラシアート
個人デザイン事務所時代の話。
エアブラシを使ってのリアルアートの仕事を受けた時、下請けに出してたKさんという人がいた。
Kさんは30代前半で身長155cm程度と小柄で、小さい頃にやった側湾症のため骨格がややいびつ。
腕はいいのだが話下手でどもりがちなため、下請け専門のエアブラシ職人みたいなポジションだった。
ある日、Kさんの自宅に完成品を受け取りに行くと、これから飯を食いに行くという。
飯を食い終わったら、すぐ仕上げるから待ってくれ、5分で済むと。
5分で済むなら今やってくれりゃいいのだが、まぁ、新人の俺は待っていた。
で、本当に偶然なのだろうが、資料を入れていた書棚がバサバサと崩れ落ちた。
ありゃりゃと片付けようとして、俺は凍りついた。
写真は、女性の惨殺死体ばかりだった。多分、タイあたりの死体写真なのだろう。
どの死体も豊満(デブ)な女性の死体ばかりで、本当に気持ち悪かった…
6年前のこと、俺はとっくにデザイン事務所を辞めていた。
眺めていた朝刊のベタ記事に驚いた。
Kさんがフルネームで、コロンビア人の女性殺害の容疑者として載っている!?
まさかと思って、元の事務所の社長に電話をかけてみると…
『ナイフで胸を滅多突きにして殺しちゃったらしいよ。
うちにも昨日、刑事が来て、色々と聞かれたよ。
CGが主流になって、エアブラシアートが売れなくなってたからなぁ。
自棄を起こしちゃったのかねぇ』
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