ある女性教師と子供の出会い
「ある女性教師と子供の出会い」
先生が小学五年生の担任になった時、どうしても好きになれない児童がひとりいた。
その少年は、一人服装が不潔でだらしなかった。中間記録に先生は少年の悪いところ
ばかりを記入するようになっていた。
あるとき、少年の一年生の記録が目にとまったのである。
一年生・・朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強も良く出来、将来が楽しみ。
間違いだ。他の子の記録に違いない。先生はそう思った。
二年生・・母親が病気で世話をしなければならず、学校に遅刻する。
三年生(一学期)・・母親の病気が悪くなり疲れていて教室で居眠りをする
三年生(三学期)・・母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる。
四年生・・父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力を振るう。
先生の胸に激しい痛みが走った。ダメと決め付けていた子が突然、悲しみを生き抜いて
いる生身の人間として、自分の前に立ち現れてきたのだ。
放課後、先生は少年に声をかけた。
「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?
分からないところは教えてあげるから」
少年は初めて笑顔をみせた。
それから毎日少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。
授業で少年が初めて手を挙げたとき、先生に大きな喜びが沸き起こった。
少年は自信を持ち始めていた。
それはクリスマスの午後だった。
少年が小さな包みを先生の胸に押付けてきた。後で開けてみると、香水の瓶だった。
亡くなったお母さんが使っていた物にちがいない。
先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪れた。
雑然とした部屋で独り本を読んでいた。
205 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [] 投稿日:2010/03/26(金) 02:23:16
少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。
「ああ、お母さんの匂い!今日はなんて素敵なクリスマスなんだ。」
六年生で少年の担任ではなくなった。
卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして今まで出会った中で一番素晴らしい先生でした。」
それから六年、またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。僕は五年生で先生に担任してもらって、とても幸せでした。
おかげで奨学金をもらって、医学部に進学することができます。」
十年経って、またカードがきた。
そこには先生に出会えた事への感謝と父親に叩かれた経験があるから、患者の痛みが分かる
医者になれると記され、こう締めくくられていた。
「僕はよく五年生のときの先生を思い出します。あのまま駄目になってしまう僕を救って
くださった先生を神様のように感じます。
医者になった僕にとって、最高の先生は五年生の時に担任して下さった先生です」
そして一年。届いたカードは結婚式の招待状だった。
カードには「母の席に座って下さい」と一行、書き添えられていました・・
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