号泣必至!!超泣ける話200話超デラックス

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猫の恩返し

   

去年の春だった。会社で仕事してたら、携帯に警察から電話がかかってきた。

同居してる妹らしい女性が、意識不明で倒れていたところを発見されたという。

慌てて早退して、教えられた病院に行った。身元を確認してくれとICUに通された。

点滴の管に繋がれて寝ていたのは、やっぱり妹だった。

命の危険は脱したが、検査と経過観察などでしばらく入院することになると云われた。

入院準備の説明を聞き、実家や会社への連絡などを済ませてから家に帰った。

部屋で布団に入った途端、猛烈に不安になってきた。

もともと体弱くて持病てんこ盛りの奴だけど、意識不明で口にビニール管なんかつっこまれてるのを見たのは初めてだった。

思い出しただけでどんどん心細くなってきて、いたたまれず友達に電話した。

話してるうちに、少し落ち着いてきた。

もう大丈夫だからと電話を切ろうとした頃、唐突に彼女が言った。

「大丈夫だよ、妹ちゃんとこ、ニャンコ来とるし」

その人はいわゆる『みえる』人で、たまにそんな話をすることもあった。

それでも、そういう感覚のない私はやっぱり半信半疑で、どんな猫か訊いてみる。

「白くてデカくて、アタマんとこだけ帽子みたいに黒っぽい猫だね」

………びっくりした。

間違いない、妹が中学生の頃、学校帰りに拾ってきた猫だ。

拾った時にはもう大人猫だったオスで、Tという名前だった。

大きくて貫禄があり、毎日黙々とパトロールに出る無愛想なヤクザみたいな雰囲気の猫で、妹が一番かわいがり、妹に誰よりも懐いていた。

うちに来て1年ちょっとで事故死したけど、冬の寒い日に、妹の肩先を温める

みたいに、首のそばにくっついて寝ていたのを思い出す。

でも、この猫の話を、私が友人にしたことは一度もなかったのだ。

妹と猫の話をすると、友人はふーんと頷いて続けた。

「あとなー、なんやらマダラの小さいのもおるわ」

実家には絶えず何匹かの猫がいるけど、そっちには心当たりがない。

記憶を探って悩んでいると、友人は笑った。

「はは、今あんたんとこにも一部来とるよ。大丈夫かなって様子見とるわ」

彼女の話では、ひとつの霊が同時に違う場所に存在するってこともあるらしい。

今のおおよその割合は、妹のところに九割、私のところに一割くらい。

嬉しいような怖いような、複雑な気分でその日は寝た。

数日たって、妹がまともに喋れるまで回復した頃に、私は彼女に話した。

Tが、あんたの事気にして様子見に来てたって。

妹は顔を覆い、心配かけちゃったなあ、と涙声で言った。

マダラの子猫の謎も、本人に訊いたらあっさり解けた。

大学時代、構内に野良猫が沢山住み着いて、学校側が駆除のため毒餌をまいた。

それを口にして死にかけていた子猫を、妹は自転車置き場で見つけたという。

結局、手当しようもなく膝の上で看取った子猫は、黒茶のマダラだった。

もう10年くらい前の、私も初めて聞いた話だった。

母にこの話をしたら、見舞いに上京してきた時、庭にあるハクモクレンの木から花を一輪だけ枝ごと折り取り、ビニール袋に入れて持ってきた。

すぐに傷んで変色してしまう花だと思っていたのに、長旅のわりに白い綺麗なままだったのが、ちょっと不思議だった。

Tは、そのハクモクレンの木の下に眠っている。

あれから1年少々。妹は今日もそれなりに元気だ。

この間、起き抜けに寝ぼけて転んで、生爪をはがしたりもしてたけど。

 - 動物の泣ける話

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