号泣必至!!超泣ける話200話超デラックス

号泣必至!!超泣ける話200話超デラックス

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完璧な母親

   

幼児のころから、母には虐待されて育った。
子供らしい些細なまちがいをしただけで、一晩中、執拗に殴られた。
髪を掴まれ逆さに水風呂に突っ込まれて、呼吸がとまったこともある。
立てた襟に首をひそめて、絞められた痣を隠しながら学校へ通った。
ようやく18歳になり、私は待ちかねたように家を出た。

何年か経ち、母が倒れたと病院から電話があった。
深夜病院に着いたのは、緊急手術が終わったあとだった。
倒れたときの意識状態が悪く、おそらくは・・・と言葉を濁して
執刀医が去ったあと、私はICUの前で立ち尽くしながら夜を明かした。

朝になり、体がもたないよ、と知人がマクドナルドを買ってきてくれた。
私は礼を言って受け取り、病院の待合室で食べることにした。

ああこんな味なのか、と思いながら、少し苦笑した。
いい年をして、そういうものを食べたのは初めてだったからだ。
なぜだろう・・・と考えて、稲妻のように思い出が駆けめぐった。

服は全部、型紙から起こした母の手縫いだった。
子供には少しでも安全な食べ物を、とずいぶんな手間をかけて、
母は無農薬の野菜や無添加の食べ物だけを買い集めていた。
おやつはいつも手作りで、出来合いのものを食べさせられたことは
一度もなかった。
ファストフードを食べない習慣が、いつか私にも受け継がれていた。

少し性格が弱く、生真面目なだけがとりえの母が、完璧な母親らしく
あろうとして追い詰められていた苦しみを、理解してあげられなかった。
母は母なりの地獄を抱えながら、精一杯愛そうとしてくれていたんだ。

外来患者がざわざわと行き来する待合室の長椅子で、声が漏れないよう
マクドナルドの紙袋をきつく顔に押し当てながら、私は黙って泣いた。

 - 母の泣ける話

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