号泣必至!!超泣ける話200話超デラックス

号泣必至!!超泣ける話200話超デラックス

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「機械」だったバイク

   

とある中古のバイク屋で店員をしていた。(今は転職して違う業種)

バイクは特に好きでも嫌いでもない。

金があれば欲しいな程度にしか思っていなかった。

免許も車に付いてくる原付しかない。

しかし出張で東京の方の店舗へ1週間ほど行ったとき、それまでは内勤の事務作業だったのだが初めてバイク屋として売り場へ立った。

そこでは、様々な人生模様があった。

はっきり言ってそこのバイク屋はメーター戻しをしたり、金をもらっといて納車整備はしない。

なんてざらにあった。そんな所に客がかなりくるんだよまた。

ある時、子連れの夫婦が来た。じっと見てると何やら口論している。

「あんた、これ全部で100万以上するじゃないの」

「いや、ほんと仕事も頑張るから、お願い!!」

「パパ、これ買うの??後ろに乗せてね」のような。

その人が見てたバイクはZⅡ、珍車ではない。ノーマルのやつ。

聞いているとその人が学生だった頃に先輩が乗っていて、それを借りて初めて乗ったバイクなんだって。

ずっと憧れてて、ずっと欲しくて探してたらしい。

うちのショーウィンドウで見かけた時は本当に大喜びしたみたい。

長々と奥さんを説得するだんな様。

そんな旦那さんを見かねて少し仲介に入ってあげた。

「すいません、もし今乗っているバイクがあれば、下取り価格という事で安くは出来ますよ、ありますか?」

「ありますあります!!今から乗ってきますから待っててください。」

興奮したような旦那さん、奥さんと子供を置いて取りに帰った。

待ってる間、奥さんと子供にコーヒーとジュースを出してあげた。
奥さんは
「あんな何十年も前のバイク出してもお金がかかるのに、ごめんなさいね」
と言ってた。

私は「見てみなければ分からないもんですよ」と返した。

実際に私もそんなに期待はしていなかった。

20分ほどして旦那が戻ってきた。極上のCBX400Fに乗って。

マフラー以外ノーマルで乗ってて、多少の傷はあるものの見ただけで分かるほどの洗車と整備を怠ってないバイク。

店に出せば100万以上の値はいくだろう。業者間オークションでも80万以上。

私は「じゃあ、このZⅡとこのバイク。差額20万円でいいですよ」と。

心情的には差額無しで行きたい所でしたが無理でした。

奥さん、大声で「これが80万円の価値があるの!!?」とのたまわった。

旦那は涙を流していた、正直その時私には理解できなかった。

「大切にした甲斐があった、売る為に買ったわけじゃないよ。

ありがとうありがとう・・・何年もありがとうな、ごめんよ」

新しいバイクを手に入れる代わりに思い出の詰まったバイクを私ら業者に売る時の気持ち、どんなだろう。理解できなかった。

私にとって「機械」だったバイクにここまで真剣に涙を流せるなんて。

しかし旦那が言った一言
「どうかこのバイクを次も大切にしてくれる人の所へ売って下さい。お願いします」っと。

私は涙がポロポロと出てきた、今まで何台ものバイクを引き取って事務処理をして、廃車手続きをして解体したり次へ売ったりして感情を失っていたのかもしれない。私は店員なのに一緒に泣いた。

「すいません、お客さんの前なのに。。」

旦那さんは手続きをすませ、帰った。

私はその夜CBXとZⅡを丁寧に洗車した。ZⅡには
「次のお前の主人、いいやつだぞ~」と。

CBXには
「今まで可愛がってもらってたんだなぁ~次もそうだと良いな」
と思いつつ、はたから見れば薄ら笑いを浮かべつつ洗車をする私は気味が悪かったと思います(w

あまり泣けないですし、私の体験談ではないのであれですが。

色々と教えてもらった経験でした。

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